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● SKULL DRAIN’s --- お宝争奪戦の幕開け ●

神の聖剣、シルフォウス。
神によって聖なる奇跡の力を与えられた剣。
聖剣に宿りし奇跡の力を使えば願いを叶えられると信じ、
人々は聖剣を奪い合い、争った。
神は聖剣を隠し、聖剣の奇跡の力に封印をかけた。

隠された聖剣の在り処。
奇跡の力を解放する鍵。

その二つを巡り、人々はさらに争いを繰り広げた。


蒲公英たんぽぽの宝刀
バーントシェンナの玉手箱
ゆるしのバックラー
アズライトの錫杖
ベルフラワーのコルセスカ
常磐のオーブ
無彩の絵画
ギルティの墓


遺された8つの手がかり。
そこに何があるのかを求め、人々は争う・・・

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三人の、ちょっとキャラが被ってる若者で構成された『スカルドレイン』

コードネームは・・・・

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「ステラ、影次郎えいじろう!ボサっとしてないで行くぞ」
18歳の少年、雨季羽うきはが声を上げると、
ステラと影次郎が嫌々そうに、渋々彼の後を付いて行く。
街に溢れる人ごみを器用に掻き分けて。
影次郎に関しては大好物のメロンパンを頬張りながら歩いている。
「こら、影次郎。食べながら歩くな」
そんな影次郎を雨季羽は叱る。
が、影次郎は、べっ、と舌を出して拒否した。
「そんな母さんみたいなこと言わないでよ」
と、影次郎。
「雨季羽は僕らの母さん代わりってだけで、別に母さんじゃないんだからさ」
「そう言う問題じゃないだろ」
言って、雨季羽は影次郎の頭を叩く。
「ステラも酒臭いぞ。また飲んできたんじゃないだろうな?」
目を細めてステラに疑いの目を向ける雨季羽。
すると、ステラは口角を上げて微笑んだ。
「安心しろ。マグカップで言うと17杯くらいしか・・・」
「飲みすぎだろ、この飲酒常習犯が!!」
ステラに突っ込んだところで雨季羽はため息を付く。
「大体、俺たちはまだ聖剣と鍵に一歩たりとも近づいてないんだぞ」
分からせようと、雨季羽は2人に改めて言う。
「大丈夫だろ?まだまだ他のヤツらも暗号に近づいてすらいないんだから。
私たちは適当に旅して、適当に頑張ってりゃ、何か良い事あるよ」
「何で大事な所が曖昧なんだ!」
ステラの言葉に雨季羽はまたため息を付く。
「ったく・・・とにかく、まずは『蒲公英の宝刀』からだな」
歩きながら雨季羽は呟いた。
そこでようやく、人ごみも徐々に解けて、三人は村の出入り口に立った。
「刀って言うのはジパングから来た武器だ。探るならジパングだろう」
出入り口を示す門の柱にもたれかかり、雨季羽は腕を組む。
「でも、ジパングは島国だから・・・どうしても海を渡るしかなさそうだな」
ステラがそう言うとおり、
ジパングとは、海のど真ん中に浮かぶ小さな島国である。
独特の文化・風習がこの辺りの大陸などで時々ブームになったりする。
「確実に行くとなると、まず調べてから・・・かな」
影次郎が言うと、雨季羽とステラは頷いた。
「ならやっぱり・・・ここから北にある『学術都市ロビュスタ』の図書館を目指すべきだろう」
雨季羽は言いながら腕を解いて、また先頭を歩き始める。
「行くぞ、二人とも」
背中越しに言わずとも、仲間は付いてくる。



―学術都市ロビュスタ。
ここは主に学問が盛んな都市で、世界で一番大きな図書館や数多くの学校があり、
「調べもの」をしに来る人々や学生で溢れ返っている。
また、真面目で勤勉な人が多い事が一応の原因とされているが、
ゴミ一つ落ちておらず、都市全体がとても綺麗なことでも有名である。

そんな場所へ、三人は足を踏み入れた。
予想以上に遠く、此処に来るまでに三日も掛ってしまったが。
「ここに来たのは初めてだが・・・・気持ちの良い所だな」
普段はあまり表情を露骨に表さない雨季羽なのだが、
几帳面で綺麗好きな彼にとって、この都市はとても良い環境だと言える。
彼は微笑んでいて、実年齢相応の表情だった。
「私が案内する。何回か仕事の関係で来たことがあるから」
ステラが言う。


ちなみに説明しておくと、彼らの名は本名ではない。
それぞれ違う場所に居て、元はバラバラだった。

雨季羽と影次郎は同じジパングで生まれ育ったが、
ある日、雨季羽は故郷を滅ぼされて家族や仲間を失った。
ある日、影次郎の妹は重い病を患った。
2人は出会い、共に聖剣を求める旅に出た。
失くしたものを取り戻すため、病を治すため。
これが、2人が聖剣を求める理由だ。
ステラに関しては何も分かっていない。全てが謎だ。
ただ、旅路の途中に出会った、それだけ。
聖剣を求める理由すら話してはくれなかった。

彼らがもしも聖剣を手に入れれば、スカルドレインは解散する。
そして最後に三人で聖剣を奪い合う、もしくは譲り合う。
それがスカルドレインの“約束”。


と言うわけで、ステラの言う「仕事」の意味は、誰にも理解出来ない。
知らないのだから。
「じゃあ任せる」
何の疑いも無く、雨季羽はそうステラに頼み、
影次郎もステラに付いて行く。

しかし、少し歩いたところで、ステラは足を止めてしまった。
どうかしたのか、と問い掛ける前に雨季羽はステラの視線の先を見つめた。
そこには一人の青年が。
「ライ!!」
雨季羽はそう青年を呼んで駆け寄る。
2人も同様に。
ライ、と呼ばれた青年は、一瞬だけあからさまに嫌そうな顔をしてそっぽを向いた。

ライ=アクシス。
22歳の青年魔術師。現在は一人で探偵をやっていると言う噂だ。
彼は昔、スカルドレインの一員であった。
が。自分のペースを乱され、一人の方が絶対に早く聖剣を手に入れられると豪語した結果、
三人と別れて一人で聖剣を求め、探している。
しかし、そんな彼は器用で何でもこなす、凄腕の魔術師。
と言う事もあってか、他チームからの協力依頼が数多く舞い込んでいる。

「・・・・騒ぐな。迷惑だ」
ライは嫌みったらしく言うが、三人はもう慣れた。
それに、彼の根っこの性格なども見てきているため、
一言嫌味を言われたぐらいでは怒りはしない。
「お前も図書館に用か?」
「そうだと言ったところで、どうする気だ?」
雨季羽が尋ねると、ライは気だるそうに答えた。
「で、結局・・・お前達は何から手をつけるつもりなんだ?」
そっぽを向いていた顔を雨季羽の方に向け、ライは言う。
「『蒲公英の宝刀』に関しての資料は数多い。まずはそこから片付けていこうと思う」
雨季羽が答えると、ライはため息を付いた。
やれやれ、と言うかのように。
「資料の数は半端じゃないし、その99%がフェイクの資料だ。最後に回した方が懸命だぞ」
「何であんたに指図されなきゃならないのさ。僕らとあんたは敵だろ」
「指図はしてない。言っただけだ」
ライと影次郎は軽くにらみ合う。
そういえば、昔からライと影次郎の仲はあまり良くなかった。
特別仲が悪い、と言うわけではないのだが。
ケンカするほど仲が良い関係、とでも言っておこう。
「どの資料がもっとも信憑性が高いのか。その基準は?
それに、本当の資料がこの図書館にあるかどうか分からないんだ」
ライは一旦息を付き、また口を開く。
「競争率は高いが『バーントシェンナの玉手箱』から手をつけた方がいい」
そう彼は助言した。
「じゃあライは何を狙ってるんだ?」
ステラが訊く。
「俺は『蒲公英の宝刀』だ」
「って、それって僕らが邪魔だから『蒲公英の宝刀』から遠ざけただけだろ」
影次郎は答えたライに反発するが、ライは首を横に振る。
「違う。お前らなんかじゃ絶対に探しきれないから後回しにしろ、と言っただけだ」
「ふーん、あっそ。じゃあ一人で探しきれるんだ?」
「誰も一人で探すなんて言ってない」
えっ、と影次郎は目を丸くする。
まぁ確かに、ライはそんなことを一言も言っていない。

と、その時だった。

「ライ様あぁぁぁ!!」
ライを呼ぶ声、そしてバタバタと言う足音。
見ると、一人の少女らしき姿の人影が、
スカートの裾を持って、全力疾走で走ってくる。
そしてその人は、ライの隣まで走ってくると、
顔を真っ赤にして息を切らせ、肩で宙を切った。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・や、やっと見つけましたわっ!!」
「・・・・何の用だヘンリエッタ」
ライは面倒そうに、さらには軽く舌打ちをして言った。

ヘンリエッタ=エフェクトス。
何処かの貴族の女の子。ただし年齢不詳。
愛称は『ヘンリー』。(一部の人間にしか呼ばれていないが)
一人称は『リエ』。
魔術の威力だけならライをも遥かに凌ぐ天才魔術師。
ただし、コントロールが下手なので周囲に迷惑ばかりかけているドジっ子。

「え、何の用って・・・そのぉ、だから、ライ様に会いに・・・」
きょとん、とした様子で言うヘンリエッタに、
ライは今度こそしっかり聞こえる音量の舌打ちをした。
それに対し、ヘンリエッタは怯えたように一瞬体を震わせる。
「・・・まぁ、一応紹介はしておく。ヘンリエッタだ」
渋々、と言ったようにライはそう言った。
声に覇気が無い。
「ライの助手か何か?それとも恋人さん?」
茶化すようにステラが言うと、ライはため息を付いた。
「・・・・・面倒だ。助手ってことで構わん」
そのライの言葉を聞き、ヘンリエッタの顔が、ぱぁっと晴れ渡った。
「ライ様、本当ですの!?リエを助手として見ていてくれていたんですのねっ!」
実に嬉しそうに、ヘンリエッタは悦に入る。
ライが、この手の女性を苦手としている事を知っていた雨季羽は、
彼の肩にそっと手を置き、
「頑張れ」
と、“自分には関係なくて本当に良かった感”を出しながら言った。
「・・・・嫌味かそれは」
ライはもう一度ため息を付いた。
「まぁいい。行くぞヘンリエッタ。お前も資料を探すのを手伝え」
「も、もちろんですわっ!!」
ライは踵を返し、図書館へと向かった。
まるで懐いた子犬のように、ヘンリエッタは彼の後を追っていった。
「何かややこしそうな女に捕まったな・・・」
雨季羽はボソっと呟いた。
ライも可哀想に、と。



―学術都市ロビュスタ 中央図書資料館。
世界で最も大きく、冊数が多い図書館。
そこには、先ほどのライとヘンリエッタの姿もあった。
「すごい数の本棚・・・想像以上」
背の高い本棚たちを見上げ、影次郎は言う。
世界一の図書館。
世界中の本が集まっているのだ。当たり前といえば当たり前だが、
かなりの冊数。それに負けない客。
「・・・で、結局・・・ライの言うとおりにしてみるのか?」
ステラが雨季羽に尋ねる。
一応、チームリーダーは雨季羽であるからだ。
「資料が多い分『蒲公英の宝刀』を探した方がいいと思っていたが・・・・それはライに任せよう。
あいつが情報を見つける。俺たちはそれを奪えばいいだけの事だ。待てるなら宝刀を手に入れるまで待ってもいい」
「正義感の強い、あの雨季羽が・・・ちょっと意外だよ」
雨季羽の提案に、影次郎は関心深げに言う。
「まぁ奪う奪わないはどうでもいい。『バーントシェンナの玉手箱』から探るぞ」
雨季羽が言うと、
「了解」
と、ステラと影次郎が同時に頷いた。

三人が別れて資料を探し始めて数時間。
いつの間にか夜になっており、窓からは街灯の明かりが少し差し込んでいた。

「あーっ!!ダメだっ・・・有力な手がかりが全然見つからない!」
半ば諦め、影次郎は息を付いた。
そして本棚のそばで座り込んでしまう。
「・・・・・どの本もこの本も、全部『バーントシェンナの玉手箱』の逸話しか載ってないしさぁ。
寧ろ、玉手箱の事自体が載ってないし。雨季羽ー、もうお腹空いたー」
これだけ何冊もの本を読んで、何の手がかりもなく、
影次郎は既に飽きてしまっていた。
流石の雨季羽も困った顔で唸る。
「あぁ・・・そうだな・・・・・逸話も逸話で全く関係の無さそうな話だし・・・」
ふー、と長いため息を付く。

「2人とも」
そんな時、ステラが一冊の本を読みながら、早歩きで歩み寄ってきた。
「『バーントシェンナの玉手箱』・・・S.D.歴238年に、セゼル火山の土に雨水を混ぜて作られた箱。
神によって強大な力を与えられた箱は、今では聖剣の鍵の手がかりとなっている」
ステラは読み終えると、本を閉じた。
「行くならセゼル火山だ」
少し自慢気に、はにかんでステラは言う。
「その本、何処の本棚にあったんだ?」
雨季羽は、一番奥とか、そういう答えを期待していたのだが、
「さぁ?」
と、ステラは返してきた。
「ライが、手掛かりになりそうな本を見つけたから、って言って渡してくれた」
ステラは言う。
「・・・ライ、口ではああ言ってたが、本当は玉手箱の資料を探してくれてたんじゃないか?
『蒲公英の宝刀』の資料を探すフリをして、ヘンリエッタまで巻き込んで」
雨季羽の言葉にステラが頷いた。
「ったく、アイツは何がしたいのか・・・恥ずかしがり屋も困ったもんだな。
それに・・・ライが今更図書館で調べモノってのもおかしな話だろ」
クスクスとステラが笑いながら言う。
「ああ・・・・・ライは此処の出身だ。毎日この図書館に通いつめて・・・
本、資料の有無。内容。ライの頭なら全部暗記してるハズだ」
雨季羽もつられ、口元を緩める。
ライの知識の深さと広さは、彼らもよく知っている。
「・・・・明日からは早速セゼル火山を目指すぞ」
雨季羽は言いながら振り向いた。
「・・・・・・ったく、まだ子供なんだな・・・」
微笑んで雨季羽は言う。
いつの間にか、影次郎は本棚に持たれかかり、座って、寝てしまっていた。
「よく食って寝る割には、身長が伸び悩んでるみたいだけど」
「・・・言ってないで、行くぞ」
雨季羽は影次郎のそばで屈み、彼を抱き上げる。
「いいなぁ、お姫様だっこ。私もしてよ」
冗談でステラは言ったつもりだったのだが、
「お前は・・・重そうだから嫌だ」
と言われたので。
「私が女だったら殴ってるぞ」
ステラは怒り心頭だったとか。

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